日々の泡

いろんなものの習慣付けに使うブログ。ブログ名は頻繁に変わります

好きなもの04「夏への扉」

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泣く子もだまるSF界の巨匠ロバートAハインラインが1956年に発表したコールドスリープやタイムトラベルを題材にしたSF小説

猫がかわいい小説

巻頭句として「世のすべての猫好きへ捧ぐ」と表されているとおり、この小説の楽しみの3割くらいは愛猫ピートが担っている。

護民官ペトロニウス

ピートの正式名称は「護民官ペトロニウス」というかっこいい名前。
だが、ピートは普通の猫であり、特別なSF猫というわけではない。
普通の猫に変な名前をつけてる飼い主の話である。

作中の「夏への扉」とは

飼い猫のピートが、外に出るため、扉をあけてくれとせがむ。
冬のだと、ピートは扉を開けても外に出ない。

ピートが行きたいのは「冬の外」ではなく「夏の外」らしく、冬になると「夏への扉」を見つけるため、家中の扉を開けることになる。

というような書き出しからはじまる。
わたしはこの書き出しが、もっとも好きだ。


恋愛小説でもある。

主人公は物語冒頭で(猫の話をひとくさりしたあと)大失恋をして、その傷心から、もうこんな世界から抜け出してやる!といった感じで、コールドスリープに入る。
目覚めてから、色んなことが起きる「猫好き恋愛SF小説」がそれが夏への扉だ。

日本ではやたら人気がある。

おすすめ古典SF小説とか、SFだけど感動できる小説(わたしからするとSF小説はつねに感動に溢れているが)とかになってくるとベスト50位くらいにはまず入りこんでくる本作だけど、海外では日本ほど評価されていないそうだ。

日本では歌も作られてしまった。

その名も「夏への扉

作詞が吉田美奈子で、作曲が山下達郎という安定のナイアガラコンビ。

タイトルが「夏への扉」からとられているとかではなくて、歌詞も丸々原作に則ったものになってる。

これは日本で「夏への扉」がラジオドラマになったときに作られた曲だそうだ。

RIDE ON TIME (ライド・オン・タイム)

RIDE ON TIME (ライド・オン・タイム)

 

 

この曲以外にも、iTunesとかで探すとちょこちょこ「夏への扉」というタイトルで、タイムトラベルや猫を題材とした曲が数曲ある。

 

ドラえもんとの強い類似性。

別に「ドラえもん」が夏への扉のオマージュであるとは言わないが(藤子・F・不二雄先生は、まず読んでる作品だとは思うけど)

猫とタイムトラベルといえばドラえもん
とくにドラえもん1話とわりと類似性がある。

・季節が冬であること
・猫(型ロボット)が時代を越えてやってくること
・失恋があること
・未来での結婚が描かれてること
・結婚相手が成長した元幼女であること

などなど。

もう一度いうが別に藤子・F・不二雄が「夏への扉」に影響を受けたとは言いたいわけではない(絶対読んではいるけど)。

ただ日本でやたら人気があるのは、ドラえもんと似たモチーフが出てくるのが影響してるのかなとわたしはひっそりと思っている。

 

ドラえもん 1 (藤子・F・不二雄大全集)

ドラえもん 1 (藤子・F・不二雄大全集)

 

 

エターナルサンシャインとも似てる

失恋SFものということであれば、ミシェルゴンドリー監督のエターナルサンシャインとも近い。
こちらは喧嘩して、失恋して、タイムスリープするかわりに、記憶を消してしまうという話。
まあ、認知系SFになってくるのでハインラインというよりかは、ディックっぽい雰囲気だけど。 

 

wikiによると元ネタはモンテ・クリスト伯らしい

モンテ・クリスト伯はエドモン・ダンテスという若手のいけいけリア充船長が、無実に罪で投獄されて14年間幽閉され、脱獄したのち、金持ちになって仕返しするという話。

14年間投獄されるというのが、そのままタイムスリープに置き換えられているそうだ。なるほど。

 

モンテ・クリスト伯〈1〉 (岩波文庫)

モンテ・クリスト伯〈1〉 (岩波文庫)

 

 

 

 

夏への扉」は復讐のはなし

モンテ・クリスト伯が復讐の話であるように「夏への扉」の物語の大部分は復習の物語になっている。
なので、主人公はよく怒ってるし、時代も違うし、文化も違うから、なかなか主人公に感情移入はしにくい。
だから、心地のいい物語なのかと言われたら、そこは難しい。

夏への扉」を肯定してるところが、この物語のすべて

結局、わたしが「夏への扉」でもっとも好きなのは、猫のピートが「夏への扉」を探していて、主人公がそこにちゃんと付き合うところだ。

ピートのことを「学習能力のないバカな猫」とか「めんどうくさい猫」と扱うこともできるのだけど、この物語ではちゃんと、「ありもしない夏への扉」を探すことを、なんの疑いもなく肯定している。そこが美しく感じる。

存在しないかもしれない理想とか、希望というものを、探し続けること、それが「夏への扉」であり、そこが一本通ってるから、ただの復讐劇にはならず、どこかすがすがしい感じのするSF小説にしあがっているのだと思う。

もっとおもしろいSF小説はいっぱいあるけど

この作品よりおもしろいSF小説はたくさんあるけど、せっかく日本に生まれてきたのだし、どうせはまったら片っ端から読むことになるのだから、読んでおいてもいいんじゃないと思う一冊だ。

まあ、タイトルが素晴らしいよなぁ。

 

夏への扉[新訳版]

夏への扉[新訳版]